バラの挿木(手順詳細) |
冬の挿木は「バラの休眠枝挿し」をご覧ください。
画像は2011年5月に挿し木した切花品種「シェリル」の2017年5月27日の様子。
ベランダが狭く、大きく育てることが難しいので6号深鉢を使い、冬に短く切り戻して小さく仕立てています。挿し木から丸6年目の株です。
栽培スペースが狭いのであまり種蒔きや挿し木をすることはないのですが…。
「シェリル」や「サウダージ」などの切花品種は、苗が流通しないため、どうしても自身で栽培したいと思えば、切花を入手し挿し木をすることになります。
ただし、自宅で育てているたくさんのバラを挿し木で殖やし「基本的に失敗はない」というバラ友さんですら「購入した切りバラからの挿し木は全滅した」というくらいショップ購入品の切りバラからの挿し木はつき難いデス。
切ってから下手をすると数日経過し、暖かい季節ならば冷蔵され輸送されてくる切花ですから、どうしても挿し穂となる枝の鮮度と体力が落ちているのです。
「ついたらラッキー♪」くらいの気持ちでチャレンジするのが良いかもしれません。
以下にご紹介するのは、管理人が【ちゃんと挿し木をする場合の手順詳細】です。
ぐーたら者の管理人もショップ品の切りバラから挿し木をする場合はこの手順を守ります。
手順1【挿し穂の準備】
(1)挿し木したいバラの枝を入手後、すぐに切り口を少し切り戻します。
このとき、必ず切り口を水に浸けた状態で、よく切れる刃物で切ります。
(2)切り戻した枝は十分に水上げをします。(1時間以上)
作業の合間も、作業中の枝以外は必ず水に浸けておきます。
挿し穂は、その年に伸びた若い枝で、ある程度硬くなった、3~5mmくらいの太さのものが適するようです。今回、管理人は[写真1]の①と②部分を挿し穂として使用しましたが、①”も③も、挿し穂として使えます。入手した枝の状態により、切る位置を調整してください。
活着しやすい=細い枝>太い枝
活着後の成長が良い=太い枝>細い枝
◎花後、切り戻した花枝
○切り戻したブラインド(脇の新芽が動き出す前のもの)
×伸びたシュートを摘心したもの
(3)挿し穂は、1本につき5枚葉を2枚(写真2の①、②)付けてカットします。
5枚葉を2枚つけて挿し穂をとるのが難しい場合、写真2の①の葉だけを付けて、②のあたりでカットして使うことも可能ですが、挿し穂の上部に5枚葉の部分(芽の出る位置)が全くない枝は挿し穂として使えません。この場合重要なのは5枚葉そのものではなく葉のつく部分(=芽の出る部分)で、そこから出る芽が挿し穂が発根した後、挿し木苗の株を作ります。
(4)挿し穂の下の5枚葉とトゲを取り、上の5枚葉の小葉を減らす。
(5)挿す(下)側の切り口をよく切れる刃物で斜めに切り戻す。
(6)(5)で切った面の裏側も斜めに切り戻し、切り口を楔形(V字)にする。
ここで行う調整は、挿し穂を扱い易くし(トゲをとる)、挿し穂の負担(水の蒸散)を減らし、挿し穂を助ける(給水量を増やす)作業です。しっかり根が張るまでの挿し穂はとても小さくて軽く不安定で、ちょっとした引っ掛かりでスポッと抜けてしまうことがあります。管理作業時の事故を防ぐためにもトゲはとってしまいます。
葉は、光合成により挿し穂の力となりますが、同時に蒸散により根のない挿し穂の負担にもなります。そして小さな挿し穂に大きな葉がついていると、トゲの場合と同様、風やひっかかりによって思わぬ事故を起こすこともありますので、5枚葉全体を一枚の葉として考えた場合の1/2ほどをカットします。ちなみに、葉のついていない枝だけの状態でも挿し木はできますが、葉からの水の蒸散は、挿し穂が水を吸い上げる力でもあるので、大きすぎて負担にならない程度にはつけておいたほうが良いようです。
(7)調整の終わった挿し穂は、次の作業まで、100倍のメネデール溶液
(ただの水でもOK)に浸けておきます。
手順2【挿し床の準備】
(8)容器を用意します。
基本的に容器はなんでもかまいません。プラ鉢や素焼き鉢、育苗用のビニポットなども便利です。またプランターなどに複数本の挿し木をまとめて挿すことも可能ですが、あとあとの管理の容易さを考えると小さなポットに1本ずつ挿すのがおすすめです。
画像は今回管理人が使用しているモノですが、スリット状の鉢底穴が細かい挿し木用の土がこぼれるのを防ぎ、底面吸水もやりやすく、トレーに並べて管理しやすい形状なのが気に入っています。ある程度まとめた数を挿し木する場合には、とても使い易いと思います。ホームセンターの園芸コーナーで10個セット98円で購入しました。
(9)土を用意します。
挿し木に使用する土は粒が細かく保水性の良いものであれば、基本なんでも使用できます。ただし、絶対に守らなくてはならない大原則が2つ。①清潔であること。②肥料分を含まないこと。
小粒の赤玉土や鹿沼土を単体で使ったり、混ぜて使う人もあるようです。園芸コーナーで販売されている『種蒔き・挿木用の土』なども簡単で良いでしょう。管理人は今回、小粒のバーミキュライトとパーライトを3:1くらいで混合したものを使用しました。理由は簡単。未使用の在庫が自宅にあったから(笑)。
(10)容器に土をいれ、土に十分に水を吸わせて挿し床のセットは完了です。
手順3【挿し木作業】
挿し穂の切り口をつぶすようなことがないよう、挿し穴は予め割り箸などであけます。穴をあけた後、挿し穂を挿す前に日付や品種名を書き込んだタグを立てます。予め全部のポットにタグをつけてしまったり、挿し穂を挿してからタグをつけようとすると取り違えなどの元になることがあるので、管理人は事前に用意したタグを挿す直前につけるようにしています。
挿し穂を挿す深さは4~5cmくらいで、意外に深くしっかりと挿します。その際、下側の芽の出る部分(下側の葉の付け根)が土の中に入ってしまうことがありますが、問題ないです。挿し穂を穴に差し込むようにして挿した後、上から水をかけ、土と挿し穂をなじませます。
手順4【挿し木後の管理】
挿し木後のポットは水を溜められるトレー(少数の場合、鉢皿などで良い)に薄く(5mmほど)水を張り、ポット底面を水に浸けるようにして(腰水)管理します。
置き場所は風雨の当たらない明るめの日陰がベスト。
管理人家の場合、一日を通して日の当たらない場所がないため、ベランダの一角にシェードを設置してその影においています。
水切れに注意し、萎れたものや、枝が黒く変色したものなどはポットごと取り除きますが、基本触らず、ただ待ちます…むしろ軽く忘れるくらいが良し。根がでているか確認しようと、鉢底を覗き込もうとしてポットをひっくり返す…なんていう事故を防ぐためにも、基本お触りは禁止で(笑)。
この時期(5月~6月)の挿し木は順調にいくと1ヶ月半ほどで発根します。
【※発根後の鉢上げ作業などはまたいずれ別の記事でご紹介します】